まとめと今後の課題

 改良モデルのシミュレーション結果は,(Hassan,1981)の記述と定量的にも概ね合致するものとなった。しかし,このモデルには,まだ (1)狩猟採集社会の食物利用効率や,農耕社会の純収量などの生産性の鍵を握る変数が他の変数からのフィードバックを持たない (2) Hassanの仮説で重要な役割を果たす,気候変動と野性穀類へ依存,その結果としの狩猟採集民の定住性の増大などの農業の自然発生メカニズムがない (3) オプションとしての自然環境のゆらぎが古代気象データではなくランダム関数による,など多くの改善を必要としている。また,今後, Hassanのみならず(Borserup 1965)の理論なども検証できるようにモデルを拡張することを考えている。